★ みどころ ★
 子持山は渋川市の北、約10km、群馬県のほぼ中央に位置する小さな火山です。基底部の広がりは東西約7.5km、南北約9kmで、温抜は1296mです。小さな火山ですが、地表から、100mも突き出している巨大な火山岩頚(がんけい)、それを囲んでそそりたつ数十本もの放射状岩脈(ほうしゃじょうがんみゃく)など子持山では、こうした火山の内部構造を直接観察することができます。そのほか、溶岩・火山灰・火山礫が互いに重なってできた成層火山の構造や活動の歴史を見せてくれます。
 
1 子持山の火山活動

 子持山が火山活動をはじめたのは、新生代第四紀のなかごろではないかと思われます。(今から60万年前)
 
(1)古子持火山
 約50〜60万年前の浸食された火山体で、土台(基盤)は、火砕岩<安山岩質凝灰岩、凝灰角礫岩>と安山岩溶岩などで、これらの火山噴出物を突き破って噴火することから始まりました。
 
(2)主成層火山形成期
 約60〜30万年前。溶岩、火山礫、火山灰などを交互に噴出させるはげしい噴火をくりかえし火口を中心に富士山型の成層火山がつくられました。この噴火の間に火山の内部には、何回にもわたって岩脈が貫入しました。
 
(3)カルデラ形成期
 長い火山活動が終わるころ、山頂部で水蒸気爆発がおこり、火山の上部が吹きとばされて、そこに小さな穴があいて、直径1kmはどのカルデラができました。
 
(4)溶岩円頂丘の形成期
 約50〜30万年前。この爆発で発生した泥流は南へ流れ、扇状地をつくりました。その後、カルデラ内に溶岩を噴出してドーム状の中央火口丘をつくり、これが今の山頂になっています。
 
(5)浸食され現在の地形となる。
 

 
2 観察コース(約150分)
★子持神社入口
  ↓
@子持神社
  ↓
A三号橋付近
  ↓
B五号橋付近
  ↓
C岩脈
  ↓
Dびょうぶ岩
  ↓
E大黒岩
  ↓
★子持神社入口
 

 
3 観察活動
 
準備物
・ハイキングのできる服装
・運動ぐつ
・軍手
・帽子
・地図
・方位磁石
・手シャベル
・ルーペ
・ハンマー
・タガネ
・ビニール袋
・メモ帳
・雨具
・筆記用具(マジックペン、ボールペン)
 
(1)子持神社
 子持神社入口にある大きな鳥居をくぐり10分くらい歩くと子持神社につきます。神社の下の道路におりて、上流に向かって歩きましょう。道のわきや川に沿って、ところどころに火山の内部がのぞいています。普通では火山の体の奥深くは、なかなか見ることができないのですが、子持山で最も深く大きい唐沢に沿って見学すると、火山の内部がよく分かるとともに日本一の放射状岩脈が姿を現わしています。道のわきや川に沿って、はげしい爆発で吹きとばされてきた火山灰や岩片が堆積してできた凝灰角礫岩や溶岩が見られます。
 

 
(2)三号橋付近
 橋を渡った先の道路の右側に小さな露頭がありのす。何回か流れた溶岩とその下位の凝灰角礫岩が見られます。溶岩の真ん中付近は暗い灰色で穴などははとんどない硬い岩石ですが、溶岩の上面の底に近い部分は、急に冷やされたために、ガスのぬけた穴がたくさんあり、なにかガサガサした感じです。
 

 
(3)五号橋付近
 ガスのぬけた穴がたくさんあいている2枚の安山岩の溶岩が重なっています。三号橋付近のものと比較すると違いがわかります。
 

 
(4)岩脈
 七号橋の手前50mころから今まで見てきた熔岩と違い、細長い箱を積み重ねたような幅数mの安山岩が垂直に立っています。これが岩脈です。箱を積んだような割れ目は、柱状節理とよばれ、岩脈によく見られます。ここには3枚の岩脈があり、凝灰角礫岩や溶岩の割れ目にマグマが貫入してきた様子がよくわかります。3つの岩脈をつくっている安山岩にはいろいろな種類があることが分かります。それぞれ違った時期に貫入したあらわれです。岩脈の方向を測定してみると、大黒岩に向いていることがわかります。
 

 
(5)びょうぶ岩
 3枚の岩脈から50mくらい進むと、目の前に巨大な1枚の岩の板が見えます。これがびょうぶ岩です。みごとな柱状節理がみえる安山岩でできた岩脈のひとつです。また、ここには、曲がりくねって貫入した岩脈が2校あります。
 

 
(6)大黒岩
 びょうぶ岩の南の谷に沿って登ると大黒岩(しし岩)がそびえています。下部で直径150m高さ約100mの円筒形をしています。この大黒岩は、火道につまっていたマグマが冷え、激しい浸食にうち勝ったもので、火山岩頚といわれています。火道とは、地下深くから火口まで、マグマやガスの通路になった、パイプ状の細長い穴のことです。
 大黒岩は白っぼい安山岩で結晶も大きく、今までみてきた安山岩と少し違います。火山活動の最後に外にでるカのなくなったマグマが火道の中でそのままかたまったのでしょう。
 

説明 子持山で火山地形を観察しよう

  1 ねらい

 

 子持山で火山岩頚や放射状岩脈など火山の内部構造を直接観察することによって、火山に対する理解を深め、身近にある貴重な自然に親しみ観察しようという意欲を育てる。
 

  2 観察の準備

 

≪必ずもっていくもの≫
軍手、
雨具、
ナップザック、
ビニール袋と輪ゴム、
救急セット、
フィールドノート(鉛筆にはひもをつけて)、
マジックペン、
ハンマー

 
≪あると便利≫
カメラ、
双眼鏡、
ルーペ、
巻尺、
フィルムケース、
観察板、
大型ライト、
ポリ手袋、
高度計
 

  3 注意事項

 

(1)大黒岩と子持山頂からの展望がすばらしく、晩秋から早春にかけてが趣がある。火山の体の中を見学するのもこの時期が最適である。そうでないと木の葉の衣や雪にじゃまされ、山肌を直接みることができない場合がある。
 
(2)観察コースは整備されていて危険は少ないが下見は必要である。雨のときは、滑りやすい所や登れない所があるので注意したい。
 
(3)観察コースはびょうぶ岩から大黒岩(しし岩)までのコース以外は車を乗り入れることができるので、緊急用として待機させておくとよい。子持神社入口とびょうぶ岩の所には広い駐車場があるので便利である。
 
(4)溶岩や岩石を割ったり、採集したりする場合は最小限にしたり後始末をするなど自然保護という観点からマナーを守る必要がある。
 
(5)帰りはもときた道をもどるようにする。
 

  4 資料

 

(1)植生
 山麓から山頂までクリ、コナラ、ミズナラ、など低山帯の植生とスギ、ヒノキの人口林でおおわれている。主な植物は、シモツケ、ヤマオダマキ、ザゼンソウ、オタカラコウ、コキンレイカなどである。
 

 
(2)動物
 野性哺乳動物は、キツネ、タヌキ、アナグマノウサギ、ムササビ、リスなどが生息している。
 野鳥は、5月から6月にかけての最盛期には40種以上の野鳥を観察することができる。トビ、ヤマドリ、キジ、アカゲラ、ミソサザイ、キビタキ、オオルリ、ホトトギス、カッコウ、などたくさんの野鳥の声を聞きながら観察することができる。
 

 
(3)子持火山の生い立ち
 子持火山の本体は、溶岩や火口から噴出した岩
片などが積み重なってできた成層火山である。富士山のような杯を伏せた形を完全に残しているものもあれば、頂上部がなくなり、その中にまた新しい火山が噴出しているものもある。このような火山を複式火山と呼んでいる。赤城火山や榛名火山は複式火山であり、そして、子持火山も体こそ小さいが、2つの火山が重なった一人前の大人の火山なのである。
 子持火山は噴火をやめてから長い年月が経過している。そのため山肌は深い谷に刻み込まれ普通ではなかなか見られない火山の内部がよくわかる。この火山の波乱に富んだ一生を見学を通して想像してほしい。
 子持火山はどんな成長の歴史をたどってきたのだろうか。
 成長の過程を次のように分けて探ってみる。

 
@古子持火山
A主成層火山形成(図1のA)
Bカルデラ形成(図1のDがカルデラの縁にあたる外輪山の一部、流れた泥流がつくった扇状地C)
C 中央火口丘、寄生火山の形成(図1のB)
D 壮年期地形の形成(漫食の影響)
※ それぞれの時期の火山活動の様子と復元図は前ページに掲載してある。
 
 (4)火山の特徴

 
@溶岩
 子持火山が盛んに火を噴き上げて大量の火山灰やスコリア(マグマが火口から破片になって大気中にはうり出され、冷やされて囲まったもの。数センチの黒く丸い礫。)や時には火口から真っ赤などろどろした、いろいろな種類(色、鉱物の多少や大小など)の溶岩を何回も流し出した。子持火山付近では、13種類の溶岩に分類できる。
 

 
A火山岩頚(かざんがんけい)
 マグマが地表を求め火道の中を上昇
していったが、地表に流れ出すことなく、火道の中で冷やされ固い岩石に変わったもで、子持火山の大黒岩(しし岩)がこれである。
 

 
B 岩脈(がんみゃく)
 マグマが地層を切って、あるいは他の岩石中に垂直な板のような形で貫入したもので子持火山のびょうぶ岩は、山腹に直立した岩脈である。岩脈は普通、周囲の岩石との境面に直角に、柱をたくさん積み重ねたような割れ目ができやすい。このような割れ目を柱状節理と呼ぶ。ここの岩脈は火道(大黒岩)を中心に放射状に分布し、放射状岩脈と呼ばれ、日本で最もすばらしいものである。
 

  5 参考文献

 

子持村誌 上巻
村誌編集委員会
 
群馬の地質をめぐって
野村 哲
築地書舘株式会社
 
火山の探検
地学団体研究会
大月書店
 
群馬のおいたちをたずねて
木崎喜雄他
上毛新聞社
 
ビデオ「群馬の火山」
群馬県教育委員会