平成15年度 『おもしろ科学教室』

ブラックライトで光る植物標本を作ろう

 暗闇の中で蛍光物質にブラックライトの光を当てると、蛍光物質だけが光ります。そこで、植物の水を吸う力を利用し、水に溶かした蛍光ペンのインクを植物体内に取り込ませてブラックライトで光る植物標本をつくってみましょう。  

必要なもの

材料
・黄色の蛍光ペン(またはその補充用の黄色蛍光水性顔料)・水・野草(オシロイバナ、 セイタカアワダチソウ、ホウセンカなど)・台所用漂白剤・画用紙・ラミネート加工用シート

道具
・カッター・割り箸・ブラックライト・広口の容器(ガラスの空き瓶などふたの閉まるもの)・バケツ・ラミネート加工機

 

1.観察の準備

(1)  野草を鋭い刃物や裁ちばさみで茎からカットする。  
(2)  バケツ(10リットル)に水を深さ5cmほど入れ、黄色蛍光ペンのインクを一本分溶かす。
(3)  (2)で用意したバケツに野草を差し、数時間から一晩おく。


2.光る植物を観察しよう

(1)  切り口をブラックライトで観察しよう。  
(2)  茎を縦に切って観察しよう。
(3)  光っている葉を観察しよう。
どこが光っていたのかな。絵にかいてみよう。気づいたことも書いておこう。
植物の名前
みた場所(くき、葉) みた場所(くき、葉)
みた場所(くき、葉) みた場所(くき、葉)


3.光る植物標本をつくろう

(1)  広口瓶に台所用漂白剤の原液を入れる。(手や衣服につけないように気をつけましょう)
(2)  光っている葉をみつけ、広口瓶に入れて、フタを閉める。
(3)  そのまま一晩おいておく。
ここから先は、大人の人と一緒にやりましょう。
(4)  葉から色がぬけているので、割り箸で葉を取り出し、水でよく洗う。
(5)  形をととのえて紙にはさむ。
(6)  低温から中温でアイロンをかけ、そのまま乾かす。
(7)  乾かしたらラミネート加工をする。
(8)  明かりを消して、標本にブラックライトの光を照らしてみよう。

  ブラックライトは、ホームセンターなどで売っています。普通の蛍光灯スタンドに、ブラックライトを取り付けることができます。手に入らなかったら、青のセロハンフィルムを5枚以上重ねたものを普通の蛍光灯にかぶせても代わりになります。  
 
<発展>
 どんな植物でも光るかな。光る場所や光り方は同じかな。野草だけでなく、ニンジンやフキなどの野菜でも試してみよう。きれいに光る植物標本ができたら、図鑑で草の名前を調べておくとよいですね。  
 


                  

説明    − ブラックライトで光る植物標本をつくろう −


1.ねらい

 蛍光顔料インクを含んだ水を植物に吸わせることで、植物には、水の通り道(道管)があり、葉の筋(葉脈)へとつながっていることに気づかせる。ブラックライトの光の下で神秘的に光る植物標本の観察を通して、植物や植物のからだのつくりに興味をもたせる。

(1) 学習指導要領との関連
 中学校一年で、「植物の生活と種類」の単元「植物の体のつくりとはたらき」において、「葉脈が水分などの通路であること、水は根や葉の維管束の中の道管を上昇することを茎の断面の観察や実験の結果などから理解させること。」となっている。おもしろ科学教室の主な対象は小学生であるが、改訂前の指導要領では、小学校6年で学習しており、以前には小学校4年で学習していたこともあるので、無理のない内容であると思われる。

(2) 本教材の特徴
 従来、道管の観察は赤インクや食紅を用い、ホウセンカで観察するのが一般的であった。しかし、食紅の色は、植物体のもつ自然の色と区別しにくく、色がはっきりとでない場合もあり、観察しづらいことが多かった。
 本教材で用いる蛍光顔料インクは、極微量でもブラックライトの下では、鮮明な蛍光色を発し、時間がたってもその発光が衰えない。さらに、標本とすることでインクが濃縮され、より鮮やかな発光を見ることができる。
 また、ブラックライトの下でのみ鮮やかな蛍光を発する蛍光インクを用いることで、児童・生徒の興味関心をより引き出せるものと考える。


2.材料の規格

(1) この実験に適する植物について
 水を吸い上げる力が強く、ある程度、葉脈の太いものであれば、どのような植物でも可能であると思われる。特に、オシロイバナ、セイタカアワダチソウなどではよい結果が得られた。また、ぐんまフラワーパークの情報によるとシロアジサイ、カクトラノオ、ツキミソウでもよい結果を得ている。しかし、ユリはあまりうまくいかなかったそうである。葉付き大根でも発光を見ることができるが、茎では組織全体に発光が観察され、道管ははっきりと確認できない。

(2) 蛍光インクについて
 茎のところを切ったオシロイバナに、黄、緑、オレンジ、ピンクの同一メーカー製蛍光ペンのインクを吸わせてみたところ、黄が最も吸い上げがよく、以下、緑、オレンジ、ピンクの順になった。
蛍光ペンのインクは、大きく分けて、染料タイプと顔料タイプがあり、それぞれ水溶性のものと有機溶剤に溶解するものがある。現在市販されている蛍光ペンのインクは、そのほとんどが水溶性顔料で、化学的にはローダミンやフルオルセインと呼ばれる物質であり、メーカーによる違いはない。ただし、主溶剤や着色剤以外にインクに配合されている物質があり、その種類や割合がメーカーによって異なっている。色の差は化学的な構造の違いで、粒子径や化学的性質が異なっている。このことが、インクの吸い上げと関係すると考えられる。
吸い上げのよさという点や、白色光下でほとんど確認することができないのにもかかわらず、ブラックライトの光の下では鮮やかな発光が見られ、見えたときの感動が大きいという点で、黄色の蛍光インクを使用するのがよいと考えられる。

(3) ブラックライトについて
 市販のものなら、特にどのメーカーのものでも問題ない。ホームセンターの照明用品売場等で、簡単に入手できる。小型のものは千円程度から購入できる。普通の蛍光管を青のセロハンフィルムを5枚程度重ねたもので覆っても代用が可能である。


3.作り方および注意事項

(1)
 野草を鋭い刃物や裁ちばさみで茎から切る。根が付いていると蛍光インクを吸い上げない。
 
(2)
 バケツ(10l)に水を深さ5cmほど入れ、蛍光ペン(黄色がよい)を一本分溶かす。色が薄くなるが蛍光物質はバケツの水のなかにとけこんでいるので大丈夫である。
 
(3)
 (2)で用意したバケツの水に、数時間から一晩程度野草を差しておく。
 
(4)
 広口瓶に台所用漂白剤の原液を入れる。(ゴム手袋などをはめるなど取り扱いに注意する)
 
(5)
 ブラックライトの光を当て、光っている葉を漂白剤の入った広口瓶に入れてフタを閉める。
 
(6)
 3〜10時間程度で葉から色が抜けるので、割り箸で葉を取り出して水でよく洗う。
 
(7)
 形をととのえて紙にはさむ。
 
(8)
 低温から中温でアイロンをかけ、そのまま乾かす。
 
(9)
 乾かしたものをラミネート加工し、ブラックライトの光を当てて観察する。

 
補足;葉脈標本の作り方について
 今回の方法は、柔らかく葉肉の少ない葉に適している。蛍光顔料をよく吸い上げる植物の葉に柔らかいものが多いこと、吸い上げた蛍光顔料を内部に封じ込めたまま標本とする必要性などから、この方法を用いた。
 

作業を早めるためには、(6)の処理を2時間行った後ハブラシで葉をたたいて葉肉を除くとよい。

 

4.資料

 植物の水代謝について
 食紅や赤インクを用いて、植物の水の経路である道管の観察は、理科の授業でよく用いられる。また、植物が根から吸収した水と無機イオンが、維管束の道管を通り、葉から蒸散することは中学校の教科書にも書かれている。
 しかし、実際にこの実験をおこなってみると、吸収された赤インクが観察される箇所は、必ずしも、道管があると推定される場所には限定されておらず、茎の組織全体に広がって見えることもしばしばである。また、茎と葉の基部では、赤インクが葉脈を通ることが観察できるが、途中でインクの色は消えてしまい、少し離れた葉の裏側周辺部の所々に、濃い色が観察されることが多い。
 これらの現象は、植物体内での水の移動で説明できる。根から吸収された水は道管を経て各組織へ移動するが、それぞれの部位において道管から周辺の柔細胞へも水は供給されていることを示している。そして、葉の道管に到達した水は、海綿状葉肉組織の呼吸腔と呼ばれる空間に蒸気として出る。
 従来、水の移動は細胞による浸透圧差や毛細管現象などによって説明されていたが、1993年細胞膜に水イオンチャンネルの存在することが明らかとなった。水イオンチャンネルは、伸長成長中の胚軸や根、維管束周辺部位での発現量が多いことがmRNAレベルあるいは特異的な抗体を用いたタンパク質レベルの実験で示されている。本教材の開発にあたりオシロイバナの茎を観察したときにも、吸収された蛍光インクが伸長成長中の胚軸に移動していく様子が観察できたことから、本実験によるインクの発色が水の移動を示していることが、改めて確認される。


5.参考・引用文献


朝倉植物生理学講座A 代謝 山谷知行編集 朝倉書店
 

理科の学習 東京書籍版 一年 浜島書店
 

中学校学習指導要領(平成10年12月)解説 理科編 文部省
 

理化学辞典 岩波書店